mayu tsuruta | yukio ninagawa
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  人と深く結び付きたいという欲求
tsuruta  蜷川さんが作品を創るにおいて一番大切にしていることは何ですか?
ninagawa  人と深く結び付きたいっていうことだけかも。きっと、それが一番強いんだね。鶴田さんの言っているようにピュアなモノに触れたいっていうような・・・。だから、人と人とが深く結び付いていくような作品を選んでしまうんだね。ボクはペシミストになろうと思えばいくらでもなれるような経験をして来ている。演劇は集団作業だからエゴがぶつかり合うとアッという間に壊れてしまうんだよ。昔、スターリンというバンドをやっていた遠藤ミチロウさんという人に「バンドのメンバーを選ぶ時にどういう風にして選んでいるんですか?」って聞いたことがあるんだよね。その人に言わせると会うたびにボクはその質問をしているらしいんだよ。他の雑誌でその人の記事を読んだら「蜷川さんっていつもどうやってバンドのメンバーを結成したり解散したりするんですか?って聞くんだよね」って言っていたの。だから、やっぱり、ボクの中では相当そういうことが気になっているんだと思う。


t  蜷川さんが役者を起用するときの一番のポイントは何ですか?
n  ボクが思っている世界を一緒に共有してくれる人。技術的に少々上手いとか下手だとか言うことよりもその空間を一緒に共有出来るかの方が大切。まったく重なり合わなくてもいいんだけど、共有するという意志のある人でないとダメかな。もちろん芝居も上手くなきゃダメだんだけどさ。


t  ハハハ・・・・(ちっちゃく)スミマセン・・・。
n  いやいや、ステキでしたよ(笑)。上手いっていうのは、いわゆる既成概念での上手いということではなくて、単純にボクを感動させてくれればいいの。そのかわり、ちゃんと睡眠時間もとるようにしているし、稽古場にも早く行って、毎日同じ様な状態で見られるようにしようと心がけている。だから、その時に感動させてくれたり、こんな表現方法があったのか、と気付かせてくれたりすることが嬉しい。それを受けられるようにちゃんと準備をしてきているから、ボクを感じさせてくれ!!って言う感じかな(笑)。それに、どこかで人間として求めていることが同じであって欲しいなあ、と思うよ。まあ、ぴったり同じでなくてもいいんだけど、ある幅をもったところで・・・。それと、協調性がない人はダメだね。


t  芝居はみんなで創っていくものだから、それがないと空間を共有して行かれませんよね。
n  演出家としてはまず稽古場をどうやって創っていこうかな、って考えるんだよね。そこでは何をやっても、何を言っても、失敗しても大丈夫なんだ、というルールを作らなければならない。その為にはなるべくみんなと触れ合うようにしよう、と思ったり・・・だから稽古初日ってものすごく緊張するんだよね。前の晩から何時に起きて、何時に行こうかな、とか、誰とどんな話をしようかな、とか・・・すごい気を使うんだよね。そういうことを上手に感受出来て、共有出来る人がいいねえ。


t  今回("真情あふるる軽薄さ・2001")は本当にいい雰囲気でしたね。
n  そうだね。最近ボクは幸せな演出家なんだよ。


t  私が全然出来なくて居残り練習している時もみんな遅くまでつきあってくれたし、ウランちゃん(振り付け師)なんて、こっちが向かっていけば行くだけ稽古してくれて、みんなに足向けて寝られません。(笑)
n  そういう意味では最近ボクの周りでは人間性と能力の見合っている人達が多いよ。


t  本当にいいチームだなあ、と思いました。
n  こういうふうに人が中心になってモノを創っていく現場って恋愛みたいなものなんだよね。


t  私の中ではずっと、今まで仕事をしてきて、何をやっても何かしらのモノ足りなさ、完全燃焼出来ない感じの苛立たしさが残っていて、よくインタビューで心中出来る相手を探している、なんて言っていたんですよ(笑)。それでも、なかなか心中してくれる人がいない。しかも心中というのは相思相愛でなければ成り立たないわけで、たとえ向こうが一緒に心中してくれると言ってくれても、こちらが好きでなければ、やはり命は捧げられない・・・。今回蜷川さんと仕事をすることになって、私の中にその心中感覚があったので、実は稽古前から恐かったんですよ。さんざん心中したい!!なんて言っていたくせに、実際に目の前に突き出されるとちょっと後込みしてしまうような(笑)。興奮しているのと、恐いのとで稽古初日は武者震いしてました。
n  本当に心中を迫られたような気分だったと思うよ。ボクだって失敗はさせられないし、でももっと先まで行きたいしってすごく緊張したんだよ。何かを創って行くときの信頼関係のようなものってやっぱり恋愛感情と一緒でしょ?でも、すごく上手く行ったんでよかったなあ、と思っている。だって、これで失敗していたら芝居嫌いになるでしょ?


t  (笑)
n  するとさー、もう出てもらえなくなっちゃうじゃない。それはすごい損失だからね。本当に、凄く大事なんだよ。人って、ちょっとのことでその人のことを嫌いになったりするじゃない。例えばご飯の食べ方が汚い、とかその程度のことで。だからそういう意味では細心の注意を払ったつもりではいるんだけどね。だから本当にいい出逢いが出来てよかったなあ、と思っている。仕事もしやすかったし、感謝しているよ。


t  そんなあ。(笑)
n  きっと、事務所の人や周りの人達はハラハラしながら見ていただろうけどね。(笑)


t  稽古場で蜷川さんって本当に優しいんだなあ、と思ったことがありました。それは行列の人々の演出をしている時に「ボクは行列の人々にもそれぞれ名前があった方が好きなんだけどね。」と言っていた時です。(台本では名前ではなく数字で書かれていた。)若い頃からそう思っていましたか?
n  うん、そうだね、昔は一日に100人位の名前を憶えられたんだよ。やっぱり一人一人名前で読んだ方がいいなあ、と思って。それは自分が俳優になった時に「おい、そこの坊や」って呼ばれるのが凄く嫌だったんだよね。だから自分が演出家になった時にはちゃんとその人の名前を呼んであげよう、ちゃんと一人一人と向き合おうって思っていたんだよね。それは自分にとって人に対する最低の倫理なんだよね。今はもうダメだけど、昔は天才的に人の名前を憶えるのが早かったんだよ。ボクが嫌なのは、今回はなかったけど、例えば行列に並んでいる人なんかで、自分は小さい役だからって投げやりにやる人、役に大小があることは仕方がないことで、そのプライドの処理がちゃんと出来ない人はダメだと思っているんだよ。そんな屈辱は乗り越えろ、と思うんだよね。ボクだって乗り越えてきているんだからさ。ただ、それを乗り越える為の条件は整えてあげないといけないなあ、とは思っているんだけどね。


 

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