mayu tsuruta | kiyoshi sasabe  3/3 +profile
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の在処
 
tsuruta  でも、佐々部組にもその“欲”のようなものはいつも感じません。だから楽しいのかなぁ?
sasabe  それは現場に?
t  はい。スタッフも役者さんも、ちゃんと作品のために動いているという感じがします。本当はそうあるべきなんだけど、やっぱり中にはそうじゃない現場もあるので・・・。

s  おそらくそれは、みんなが僕が何を撮りたくて、何を見たいのかを理解してくれているからだと思うんだよね。それと鶴田さんとも2時過ぎまで飲んだりしたけど、ロケハンの時からみんなと飲んだり話したりしているから撮影だったり美術だったりとかが「佐々部はこの映画でこんなことしたくて、こんなものを撮りたいんだ」ということをインする前から察してくれているからだと思う。それでも、もちろんカメラマンとぶつかったりすることもあるけど、ここからが一番よく見えるじゃないっていうと「う・・・・〜ん、そう?」って理解してくれちゃうんだよね。それはかっこいい絵だからというのはなく、欲しいものが一番よく見えるという観点で言っているからじゃないのかなぁ?

t  そうそう!それなの!!佐々部さんが一番大切にしているものが、ものすごくシンプルで明確なの!そして、それがとっても単純で“きれい”なもので、真実に近いことで・・・・それが、揺るぎなく佐々部さんの中にあるからみんなが理解出来ちゃうんだと思うんです。

s  うんうん。それで、もしラッシュの時にダメだったらその責任は全部自分で取ろうと思うんだよね。だから後は自分の一番見たい所で撮ってもらえるといいなぁ、って思うの。だから僕はわかりやすいと思うよ。あんまり現場で時間かかって悩んだりもしないし。あ、でも、今回はごめんね。鶴田さんの初日のシーンはどんな顔を撮ればいいのかわからなくて、そう正直な気持ちを言っちゃったんだけど・・・でもあの時言ってくれた一言がものすごく救ってくれたんだよ。

t  えっ???なんて言いましたっけ?
s  “ダメだったら撮り直せばいいじゃないですか”って。(笑)
t  ははは(笑)そうだ!そうだ!編集してダメだったら撮り直しましょう、って言いましたね。(笑)
s  そうそう(笑)でもね、それはなんて愛情のある言葉なんだ、って思ったの。
t  えっ?本当ですか?なんていい加減な人だと思ったんじゃないですか?(笑)

s  いやいや、僕もね“あっ、そうだね”って思えたの。あのバックのボードと窓だけ持って行けばなんとかなるやって思えたんですよ。後は空気の感じをインチキして作れば。だからカメラマン達には「このシーンOKっていうけど、万が一違ったら撮り直そうね」って言っていたの。(笑)
t  (笑)

s  一つのシーンを撮る時に一つのことを決めちゃったら意外と楽で、無駄なシーンは撮りたくないから、このシーンでは何を撮りたいかというメッセージなり、伝えたいことを早めにメイン・スタッフに伝えてあげるとみんな楽なんだよね。

t  やっぱり現場ってどのパートもものすごくエネルギーを使うじゃないですか?そのエネルギーって何かな?って考えるとやっぱり自分の“命”だと思うんですよ。そして、その“命”が佐々部組では一つも無駄に使われていないな、という実感があります。
s  ははは(笑)ありがとう!

t  それがすごく嬉しいです!みんなで夜飲んでいる時に「4人で船に乗って遭難した時に、誰かを食べなくては生きて行かれないってなった時にどうするか?」なんて話をしていましたよね。その時にどうせいつか死んでしまうんだったら、自分の命を大切に、みんなに感謝されながら、みんなの命(=パワー)のために使われるんだったら仕方がないと思えるなんて話をしていたけど、それとすごく似ていて、大げさかもしれないけど、自分の命(=パワー)が無駄に使われていないという実感があるからこそ、みんな佐々部さんや佐々部さんの創っているものにパワー(=命)を注げるんだろうなと思います。

s  無駄にはしたくないもんねぇ。自分も嫌なんです。僕、これで4本目の映画撮影なんだけど、尺長で捨てることも少ないんです。今回だってほとんどないんだよね。「半落ち」もシーンまるごとひとつ落としたなんてことないし、それだったら撮影の前に落とそうと思うんだよね。その辺の潔さは僕あると思うよ。無駄をするところは多いに無駄しよう!って思うんだけど、それはみんなも心地いいと思えるような無駄。例えば、今回の鶴田さんのラストシーンなんかがそうで、お天気待つために何回もやったけど、それでもダメだったらしょうがない、とか。それはでも、僕は無駄ではないと思っているんだよね。
でも、それはおそらく自分は17年間もチーフ助監督をやってきたからそのへんがわかっているんだと思う。


「心の在処」

はどうなんだって考えると、そこに繋がって行く
t  監督の夢はなんですか?
s  夢ねぇ、なんだろうなぁ?とりあえず、ずっと夢だった映画監督になりたい、という夢は現実になっちゃったからなぁ。う〜ん・・・・やっぱり今の家族と下関にいるおふくろと妹が幸せに暮らしてくれているといいなぁ、っていうことかな?もちろん自分に出来ることはやるし、今自分はとても幸せに仕事をしているので、それを続けて行きたいということかもしれないね。ささやかだけど、身の丈にあった映画を撮り続けながら、その周りの人たちが幸せで居続けてくれたらいいなぁ、って。う〜ん、でも、そう思えるようになったのは監督をやり出してかなぁ?40歳過ぎてからかもしれないね。それまではきっと早く監督になって大ヒット作を撮って大監督になって、黒沢さんのように佐々部って監督がいるんだぞ!なんてことを夢想したりしていた。でも、実際撮り始めてみると、撮っているそのことが幸せで、カメラの横に立ったり、地面にべったと座って俳優さんに一番近い所でお芝居見たりする瞬間がとっても幸せで・・・・それに、今のところ全部自分のやりたい仕事が出来ているし。そうすると今度は周りの人が幸せになってくれればいいなって思えるようになってくるんだよね。それはもちろん家族が一番だけど、スタッフにもいえることで・・・みんながどれだけ苦労してやってきたかということも知っているし。だから少しずつみんなが責任あるいい仕事をしてもらえるといいな、って思っているんだよね。

t  最近、周りをみているとそういうふうに家族を大事にしたり、田舎に暮らし始めてプチ農業をやろうとしていたり、東京に住んでいてもベランダで何か作ったりとか、身近なものを大切にする人が増えてきたように思うんです。もちろん、自分もそうで、結婚したせいもあるかもしれないけど、今まではすごく遠くの山ばかり見ていて、足下に咲いている小さな花を見ようとはしていなかった。遠くの山の美しさと足下に咲いている花の美しさは質の違うものだと思っていた。けど、実は別のものではなくて、同じものなんだ、と思えるようになってきたんです。

s  そうそう、ちっちゃいけどいいなぁ、と思えるシーンの積み重ねで出来る映画がいいなぁ、といつも思っているんですよ。だからなかなか人類がどうのっていう映画は難しくて。(笑)でも、本当は人はどうなんだ?っていうことを考え出すとそういうところに繋がっていくんだよね。

t  そうですね。

PROFILE: 佐々部清 >>
 

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