mayu tsuruta | kiyoshi sasabe  1/3 +profile
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手くいっている、ということ
tsuruta  今、丁度「カーテン・コール」のオールラッシュを見終わったところですが、どうでしたか?
 
sasabe  よかったと思うよ。僕がいつも基準にしていることは上手くいってるか行ってないかっていうことなんだけど、そういう意味では最初のラッシュを見た時に、まだ少し緩いけど、上手く行ってるなぁ、という実感はありました。

t  “上手く行ってるなぁ”の核になる部分って何ですか?
s  ちゃんと人が伝わるように撮れているか、ということかな。人の様が上手くいってるということは、これから映像の処理をしたり音楽をのせていったりすれば悪くなることはないからね。今回は誰が“主役”という映画を創っているわけではないので、全体を通してみた時にそれぞれの「父と娘」の思いがちゃんと観客に伝わればいいなぁ、と思っていたんです。だから、今日、一番後ろでラッシュを見ながら、ちゃんと自分に入ってきたので上手くいってるかなぁ、と思ったんだよね。

t  監督がどの作品においても大切にしているのは、やはり“人”ですか?
s  そうだね、それはスタッフにおいてもそうで、その作品が出来上がった時にラッシュを見て、「この作品に参加してよかった」」と思ってもらいたいし、また作品を撮っている最中にも“この現場に行きたい”という思いで参加してもらいたい。でも、現場でスタッフの顔を見ていればわかるじゃない?俳優さんにおいても同じだけど。ダメな時はみんないい顔してないし。(笑)今日もそうだったけど、今まで僕がやった作品では、みんなラッシュの時にいい顔して出て来てくれるので「あぁ、上手くいったかな?」と思っているんだよね。

t  私もこれで監督の作品は2作目ですけれど、いつも現場は楽しいです。それはきっと、監督が今のような思いで現場の空気を創ってくれるからだと思うんですけど、スタッフも役者も、監督とその作品をちゃんと愛しているように感じます。
s  まぁ、僕が愛されているかどうかはわからないけど、その映画の脚本とその映画が出来ていく様と、それが出来上がった様を、愛おしいなと思ってもらえるように運ぶことが映画監督の仕事かな、と思っているんだよね。それは「半落ち」の時の坂上プロデューサーに「監督っていう仕事は主義主張することではなく、オーケストラの指揮者のようなものだなぁ」というふうに言われて、「あ、そうかな」と思ったの。助監督の時っていつも監督の後ろで一歩引いて、全体を見渡そうと思っていたんだよね。みんな気持ちよく仕事しているかなぁ?とかコイツ凹んでるなと思ったら、今日ちょっと呑みに連れて行ってお尻叩こうかな?とか、監督になってもやる仕事ってそういうことかな?と思っていて・・・スタッフに対してもそうだし、俳優さんに対してもそうだしね。



ーマを掲げ過ぎると伝わらないかな、と思っている
t  脚本を書いている時に「これは伝えたい!」といつも思っていることってありますか?
s  う〜ん、何だろうね。大きなテーマというのは僕の場合いつもないんだけど・・・。というのはテーマを掲げ過ぎると伝わらないかな、と思っているんだよね。それよりもあるリアルさとかナチュラル感、柔らかさ、温かさなんかを大切にしていれば僕の映画の場合はちゃんと伝わるような感じがして・・・。
まぁ、伝わるっていう言い方は難しいけれど、ようは柴田恭兵さんが『半落ち』の時に「人が感動する映画を創りたいですね」って言ってくれて・・・。僕が映画が好きなのは子供の頃から感動させられて、もちろんその感動の度合いは色々だけど、怖い感じだったり、あったかい感じだったり、涙を流すだけが感動じゃないけど、僕が子供の頃に映画から感じた感動を、今度は創り手になって伝えられたらなぁ、ということはいつも心にあるよね。どうやったら人が感動してくれるかなぁ、って。感動って気持ちが動くことで、感じかたが動くことで、ココロが動くことだと思うんだけど、それは泣かせればいいってもんでもなくて、どうやったらその人が元気になってくれるかなとか、気持ちが温かくなってくれるかなぁ、とか優しい気持ちになってくれるかなぁ、ということで、それがきっといつもテーマになっているんだと思う。そのためにはどうやって見せたらいいかなぁ、ということはいつも考えているよね。

t  見せ方っていうのは難しいですよね。
s  でも、やりがいあるでしょ?きっと鶴田さんだって、人の気持ちが動いてくれればいいなぁ、と思って演じているだろうし。
t  もちろん!何かココロに浸透していくといいなぁ、といつも思っています。エンディングロールが終わった後もしばらく立てないでぼーっとしてしまうような、余韻のようなものが残るといいなぁ、って。
s  僕もいつも考えます。僕はハートに響く部分と実務的なことと両方をやらなければならないから・・・エンディングロールって日本の場合は始めに出演者の名前が出て、スタッフの名前が出て、最後に監督の名前が出るでしょ?だから最後までそれも見てもらうためにはどうしたらいいかなぁ、というのも考える。それにはタイトルの映像だったり、音楽だったり、ということを考えなければならないんだけど、でも、それは結局、本編がそこまで持続するような、余韻だったり、余白だったりを作ってあげないと上手くいかないなぁ、とも思っているんだよね。

t  自分が本当にココロ動かされた映画を見た後って、その後もずーっと引きずっちゃうんですよね。映画館を出て、ふと見上げると高速道路が走っていて、人が辺り構わず忙しそうに歩いていて、季節が秋から冬になっていて、そんぶん空気が冷たくなってきて・・・と目の前の景色全部が心象になってしまう。だから、そういう時って映画の影響力ってすごいなぁ、と思います。
s  映画の醍醐味ってそういうところだと思うんだよね。そういう余白を残して観客に思考すること、考えること、というのを色んなところにまぶしておきたいなぁ、というのは作っている時に思うんだよね。あ、この辺でもう説明をやめておこう、とかこっから先は観客に委ねてみようかな、っていうことはいつも頭の隅で考えながらやっているつもりなんだけどね。
 

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